日本サーバーだけが持っているもの——MusicQ、2度の演奏コンテスト、そして本物のCD
✍️ アリス・愛麗沙
結論から。 マビノギの音楽文化を語るとき、日本PCサービス(2005年4月26日開始)は特別な位置にいます。公式が演奏コンテストを開き、入賞者に現物のミニアルバムCDを送った——これは韓国にも北米にもない記録です(韓国の公式コンテストは、探しても見つかりませんでした)。日本版マビノギモバイルはまだ始まっていません(事前登録2026年8月24日開始、サービス時期は「2026年内」のみ発表)が、日本のプレイヤーが持ち込める文化的な蓄積という点では、日本がいちばん厚い。その中身を整理します。
2016年12月14日、日本PC:MusicQ
日本PCのMusicQ更新は、音楽システムの拡張パックでした。追加されたのは、他人の演奏に途中から飛び入りできるフリースタイルジャム、新規楽器10種、音楽ダンジョン、そしてリアル時間の22:30にコンサートホールで行われるNPCの日替わり演奏。2017年1月18日の第2弾では、合奏パーティの上限が16人まで引き上げられ、ピアノの鍵盤をクリックして作曲する機能が入りました。
そしてここが本題です。MusicQには公式の演奏コンテストが併走していました。
- 指定曲をゲーム内で演奏し、録画してアップロードして応募(合奏での参加も可)
- 応募締切は2017年1月4日23:59
- 一般投票は2017年1月18日から2月1日まで、1アカウント1票
- 賞は金賞・銀賞・銅賞・GM賞の4区分
賞品がこの記事のタイトルになった理由です。入賞者全員に、現物のミニアルバムCDが送られました。 加えて金賞にはゲーム内の頭光背、銀賞と銅賞にはそれぞれ効果の異なる音楽バフ付きの称号。
ゲーム内の演奏が、ゲームの外に出てモノになった。マビノギ20年の音楽史のなかで、プレイヤーの演奏が物理的な形で手元に残った例は、日本のこの1回だけです。
2021年、日本PC:2度目のコンテスト
日本PCは同じことをもう一度やっています。2021年の第2回は、ゲームのサウンドトラックのアレンジをテーマにしたもの。賞の区分は同じ4段階で、賞品は音楽配信サービスのギフトカード、メダル、専用称号、ゲーム内のホイッスルに変わりました。
CDではなくなった代わりに、「原曲を編曲して返す」という設計になっています。プレイヤーが作曲する側からアレンジャーとして評価される側へ移動した、という意味では、こちらのほうが踏み込んだ企画でした。
韓国PC:2004年、2日で400曲
時系列では韓国が先です。2004年10月14日、韓国PC(2004年6月22日サービス開始)の公式サイトに、プレイヤーが書いた楽譜を投稿する吟遊詩人掲示板が設置されました。サービス開始からわずか4か月。
その2日後の報道によれば、開設2日で約400件の投稿が集まっています。そしてこの掲示板は、今も動いています。
なぜ成立したかは、仕組みを見ればわかります。MMLはただのテキストです。書く・共有する・編集する・保存するの全部がゲームの外側で完結し、ゲーム内で起きるのは最後の貼り付けだけ。だから20年ぶんが蓄積できた。
公式ガイド(台湾Mスレッド3474890)は楽器演奏を「楽譜に書かれたMMLコードに従って楽器を演奏すること」と定義し、演奏中のキャラクターに近づくと現れる合奏ボタンと、他人の演奏を聞き取って書き起こす採譜機能を説明しています。楽器は1和音と3和音の2系統。
2016年1月2日:楽譜庫が同じ日に扉を閉めた
音楽文化がいちばん危うくなった瞬間の話をします。
2015年12月28日、ネクソンの別タイトル(メイプルストーリー2)が音楽システムを実装しました。採用された音符コードの方式が実質的に同じだったため、マビノギの楽譜がそのまま貼り付けられてしまう。そして向こうのサービスで、マビノギのプレイヤーが書いた楽譜コードを自分の作品として個人取引で売る動きが出ました。
2016年1月2日、韓国の主要な楽譜アーカイブ2つが、同じ日に封鎖されます。 一方はコードの閲覧を2015年12月28日以前に登録したアカウントに限定し、もう一方は新規登録そのものを停止しました。ネクソンは著作権侵害を監視しており、通報された事例には運営ポリシーに従って対応すると表明しています。
ここで固まった共同体の規範が、今日まで残っています——楽譜は自由に流通してよい。ただしクレジットは外れない。 楽譜が金銭化された瞬間に、それは紛争になります。
当サイトの楽譜ライブラリのビルド規則も、この歴史に従っています。編曲者クレジットのないエントリは自動的に落とす、そしてビルド時のガードがコミット済みファイルもその規則を守っているか再検証する。20年前から続いている作法をコードにしただけです。
100万ゴールドで3時間:公式がホールを建てた
2019年5月9日、韓国PC。 「ファンタスティックハーモニー」更新で、イメンマハにアルペジオ・コンサートホールが実装されました。NPC経由で予約し、3時間単位、レンタル料100万ゴールド、貸主を含めて最大20人がステージに上がれます。NPCによる公演とプレイヤーの貸切公演の両方が行われ、観覧するとバフが付きました。
2019年9月19日、北米PC。 同じ内容が4か月遅れで「ファンタスティックメロディ」として実装。100万ゴールド/3時間の条件は同じで、1回のレンタルにつきコンサートスタッフのパスが20枚。
誰も終わりを宣言しなかった公演
2023年8月18日、北米PC。 コンサートホールで定期開催されていたNPCの公演(チャンネル3〜7、土日20:00 PDT)が、何の告知もなく動かなくなりました。プレイヤーが公式フォーラムで報告し、コミュニティマネージャーが同日中に開発チームへ伝えたと返答しています。
その後の追跡投稿が2023年11月と2025年3月にあり、いずれも公演は戻っていません。
告知なし、補償なし、謝罪なし。ただ起きなくなった。 これはマビノギの音楽史でいちばん静かで、いちばん重い一件だと思っています。実装されたコンテンツより、実装されたまま止まったコンテンツのほうが、運営の余力を正確に語ります。
楽譜が、鞄をひとつ消したことがある
2021年7月29日、韓国PC。 鞄の整理機能の更新で、楽譜を持った状態で鞄を並べ替えると、その鞄の中身が全部消える不具合が発生しました。8月2日の緊急メンテナンスで50,077件が回収対象となり、**41,364件(83%)**が回収されています(詳しくは複製バグと回収の記事へ)。
このゲームでいちばん穏やかなシステムが、単独では最大級のアイテム消失を引き起こした。並べておく価値のある事実です。
モバイルが変えたもの、変えなかったもの
台湾Mの公式作曲ガイド(スレッド3474889)によれば、モバイル版の楽譜は既定で3和音、6和音まで拡張可能、1和音あたりMMLを最大2,400文字。白紙の楽譜は村の雑貨屋で買います。
PC版マビノギはメロディ+ハーモニー2本で、上限は1,200/800/500文字。
| 対象サービス | 構成 | 1チャンネルあたりの上限 |
|---|---|---|
| PC(韓国・日本・北米) | メロディ+ハーモニー2 | 1,200 / 800 / 500 |
| モバイル(韓国M・台湾M) | 3和音、6和音まで拡張 | 各2,400 |
総容量でモバイルはPCの5倍以上です。ところが——20年ぶんの共同体の楽譜は、PCの上限に合わせて書かれています。
当サイトの楽譜ライブラリ(10,493曲)の実測がそれを裏づけています。収録曲はいずれもPC(韓国・日本・北米)で書かれた共同体楽譜です。
| 最長トラックの文字数 | 曲数 | 対象サービス |
|---|---|---|
| 500以下 | 3,139 | PC(韓国・日本・北米) |
| 800以下 | 3,505 | PC(韓国・日本・北米) |
| 1,200以下 | 2,883 | PC(韓国・日本・北米) |
| 2,400以下 | 843 | PC(韓国・日本・北米) |
| 2,400超 | 123 | PC(韓国・日本・北米) |
90%以上が、旧PCの天井の内側に収まっています。 つまりモバイルの拡張された上限は、当分のあいだ「使われない余白」です。既存の楽譜資産をモバイルに持ち込むぶんには、容量で困ることはまずありません。逆に言えば、モバイルの6和音・2,400文字を本気で使う楽譜は、これから書かれるしかない。日本版が始まるとき、そこは完全に更地です。
そして変わらなかったもの。台湾Mにはコンサートホールが存在せず、実装の予告もありません。 韓国Mにも同等の会場はない。100万ゴールドで3時間ステージを借りる文化は、いまのところPCだけのものです。
日本版のローンチに向けて
日本版のクラス名・アイテム名・音楽システムの仕様は未発表です。以下は先行サーバーと日本PCの実績からの読みで、確約ではありません。
- 日本には持ち込めるものがある。 公式コンテストを2度経験した唯一のサービスで、しかも1度目は現物のCDまで出しました。演奏文化の受け皿としては、日本がいちばん準備できています。
- 既存のPC楽譜は、そのまま乗る可能性が高い。 MMLはテキストで、90%以上の曲はモバイルの上限のはるか内側です。
- クレジットは外さない。 2016年の封鎖はこの一点で起きました。20年続いている唯一の規範です。
- ホールは期待しない。 モバイル2サービスとも、演奏会場は実装されていません。
当サイトの楽譜ライブラリは編曲者クレジット必須で運用しており、日本版の仕様が判明しだいこの記事も更新します。